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PATRIK TIMES私は現代に生きるスナフキン、またの名をフキンシンという。アブサン飲んで、グッド・バイ。 

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雨と静けさと、虫の鳴き声が、掻き乱す俺の平静を。

   ↑  2009/04/22 (水)  カテゴリー: 日記・妄想
「なんか、寂しいんだ。今日、空いてるかな。」



彼女はそう言った。高校生、無垢な二人、懐かしい記憶がよみがえった。会いに行った。すぐに。彼女は、駅にいた。人形のように黒く艶のある長髪、大きな目、透明感のある白い肌、そして見せる苦笑い。相変わらずだ。美しいと思った。忘れかけていた思い出がよみがえった。

最後に会ってから2年経った。月日は互いの距離を拡げるには十分な期間だった。彼女は社会人になり、自分はまだ大学生をしていた。冷たい雨。人口素材でできた黒いジャケットが、その雨を弾く。どうして、今更。そう思った。2年で自分は変わり、はりつく笑顔、表面上の会話。

「変わらないね。」

そう言われた。変わらない。君が知らないだけだろう。知ろうとしなかった、興味が無かった。そうはっきり言ってくれた方がいい。そういうものだ、それが現実だ。中途半端な嘘はいらない。君は気付くことができなかった、俺の変化を。当然だ、2年も会っていなかったのだから。変わったよ。2年間で変わらない人間なんて、いるはずもない。変わったはずだ。服も、髪も、性格も。そして俺も君の変化には気がつかない。2年前の君しか知らない。

「先輩と付き合っているの。」

そう言われた。付き合って長いらしいと。知らない彼女の情報が入ってくる。それは自分にはどうでもいいことだった。残酷なほどに現実的な、時の移り変わり。知らなかった。無理もない。2年間のことは、何も知らない。それが現実。

「仕事を頑張っていて。でも、頑張っている姿が素敵で、」

よくある話だ。女はそういう男が好きだよな。そう思った。彼が素敵に見えるなら、大学生を未だ続けている自分は、さぞかしみっともなく見えることだろう。そうだろうな、俺は君に構うことができる、その時間がある、暇だからだ。惨めな気分にさせられたよ。

相槌をうちながら、ずっと、なんで自分を突然呼んだのだろうか、そればかり考えていた。しばらく連絡すらとっていなかった、自分のような男を呼んで、さびしいと言って、彼氏を素敵だと言って、それで、何を求めているのだろうか。二人で会って、気まずいだけだろう。彼氏にはどう説明するんだ。

「――忙しくて、全然構ってくれないんだ。」

どう答えるべきなのだろうか。そう思った。友達として、男として、どう答えるべきか。わからない。欲望と倫理、体裁、愛情、虚しさ、入り混じる感情。自分は、ただ頷き、肯定も、否定もせず。

同調。それが自分の導き出した答えだった。

「それは辛いね、自分もその立場だったら、寂しいと思うよ。社会人と恋愛している人は、大抵みんな同じようなことを思うんじゃないかな。」

逃げか。優しさか。優しさとは何だ。そばで笑っていれば、それは優しさか。誰も傷つかない、誰も。それがこの同調という答えだ。そして互いに、何も変わることはない。互いの日常に、また戻るだけ。それが優しさ。きっとそうだ。張り付いた笑顔で、こう言った。

「そろそろ、行こうか。」

この笑顔が張り付いているということも、君は気付けないんだろう。窓の外は、強い雨が降っていた。立ちあがる二人。雨はやがて、霧雨になり、店を出た自分たちを包んだ。

少し肌寒く、

「寒いね。」

そう言いながら2人で歩いていた、あの頃と同じ道、遠くなった二人。帰り際、車に乗り込む彼女を、後ろから強く、抱き締めたいと思った。けれど、今の自分に、それはできなかった。それが、優しさ。きっと優しさ。優しさという言葉を盾にしたちっぽけなプライドが、彼女と自分を遠ざけた、再び、遠く。ただそれだけのこと。繋がりかけた糸は、ほどけ、二人は再び遠く、ただそれだけのこと。彼女は、車に乗り込み、

「じゃあね、また。」

また、か。ああ、また、ね。降りしきる霧雨は、温度以上に、この体を冷やした。

「寒いな。」

傘を畳みながら、俺はそうつぶやいた。もう、会うことはないだろう。グッド・バイ。

FC2スレッドテーマ : 心を奏でる (ジャンル : 小説・文学

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2009/04/22 | Comment (0) | Trackback (0) | このエントリーをはてなブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑
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