どうもこんにちは。ロシアに墜ちた隕石が地味に不安なパトリックです。さて今回は現在公開中の映画TEDについてレビューします。ローカルなネタの多い映画だったので、記事後半では日本人に伝わりづらそうな小ネタ等についても解説していきます。
なので)アメリカ人でないと理解できないような差別的な表現や過激な文化、映画ネタやカメオ出演が盛り込まれていたため、日本人にはなじめずイマイチノリきれなかった人も多いかもしれない。反面、映画好きにはたまらないネタも多かった。映画好きの監督が楽しみながらやりたい放題やったのが伝わってくる。そういう意味では、万人向けの映画に見えて全然そうではない。つまらない人にはつまらないだろうし、小ネタやアメリカンで過激なノリを楽しめる人にはいい映画だろう。間違っても、生真面目な人は観てはいけない。
案外日本でもヒットしているようで、ちょっと意外。テディベアが喋るという題材の面白さと、予告が頑張ったということかもしれない。トイ・ストーリーやソフトバンクの犬など、日本人は喋るぬいぐるみや動物ネタが好きみたい。映画オタク要素+可愛い要素+おバカ要素+シリアス要素のバランスが良かったため、万人にヒットしたのかもしれない。
さて。
この映画ではいくつもローカルネタやカメオ出演がちりばめられており、日本人の観客には全てが理解できなかったことと思う。以下それらを解説していくので、映画を既に観て気になった人はどうぞ。
原文と字幕での大きな変更点
今作はアメリカ在住の人間でないとわからないようなローカルネタが異様に多い。自分も映画を観ている最中が元ネタが理解できないものがいくつかあった。字幕を観ながら英語を聴いて、言ってることと書いてあることがだいぶ違うな~と感じたところがいくつかありましたのでググってみると、原文が載っているサイトがあったので一部抜粋しつつ紹介しておく。
・「テディ・ラクスピンの方がいい」→「クマもんの方がいい!」テディ・ラクスピンはアメリカで昔流行った音の出るオモチャらしいです。ファービーみたいなものかな。ライバル商品といったとこだろう。
・「『パトカー・アダム30』みたいだろ」→「ガチャピンよりすごいだろ」パトカー・アダム30は80年代初めのTVドラマらしい。日本人には馴染みがないので原文だとわけがわからない人が殆どだっただろう。候補にはガチャピン以外にも西部警察等があったそう。そっちの方がわかりやすいような気もするが、ガチャピンは着ぐるみでなんでもできるからテッドと比べるのは確かに笑える。うまいと思う。
・「誰かがジョーン・クロフォードにならなきゃ」→「誰かが星一徹にならなきゃ」ジョーン・クロフォードは1940~50年代に活躍した女優。彼女が養子を虐待する『愛と憎しみの伝説』という映画で、彼女は幼児虐待の代名詞になったそう。これも日本人にはなじみがないかも。かといって星一徹は日本に寄りすぎていてあまり笑えなかった。むしろ、原文で言ってたジョーンクロフォードってなんだ、という気になった。個人的にはそこまで無理して日本語に寄せなくてもと思ったが、確かに原文では理解できない。
その他にもかなりたくさん原語と字幕で異なっているところがあったが、それらは日本語字幕監修をしていた町山さんのブログ『
『TEDテッド』の字幕に「くまモン」が出てくるわけ(ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記)』に細かく載っているのでそちらをご参照どうぞ。差別的だったり過激だったりわかりづらいところにかなり加筆が加わっている様子がうかがえる。字幕も大変だ。
豊富な映画ネタとカメオ出演
カメオ出演が異様に多かった。本人役ながら麻薬でラリったり同業についてコメントしたりとやりたい放題しかしこれらの楽屋ネタを見て喜べた日本人が果たしてどれだけいるのか……殆どが「あっこの人観たことある。」レベルで終わったと思う。
・テッド役は監督のセス・マクファーレン→事前情報無しに観た日本人は気付かなかっただろうと思う。監督で脚本で声優もやるとは驚きだ。ちなみにモーションキャプチャーまでやっていたらしい。もはやほぼ本人。笑
・ノラ・ジョーンズが本人役でテッドの元セフレ(?)として出演→主題歌「Everybody Needs A Best Friend」を歌っている。海外アーティストなので知らなかった人もいるかもしれない。「服を着ているところを見るのは初めてかしら。」という台詞に驚き。ベリンダ・カーライルのパーティでテッドと知り合ったらしい。そんなことを言われても日本人にはわからない。イスラムとのハーフと間違われるというネタも。彼女はインドのハーフ。そんなことを言われても(ry 出演してくれる懐の深さに一番驚き。アメリカ人はノラ・ジョーンズに何言わせてるんだwという方向で笑った人が多そう。
・サム・J・ジョーンズがフラッシュ・ゴードン役のノリそのままで登場日本の観客は殆どフラッシュ・ゴードンを知らないだろう。しつこいほどにこのネタが押されていたので、ポカーンとしてしまった観客もいるかも。要は日本で喩えると、仮面ライダーの本郷猛をやっていた藤岡弘が出演して、憧れの世代だった主人公が興奮する、といったようなもの。フラッシュゴードンは膨大な制作費の一方で大ゴケした映画らしい。わからなくても一応笑えるようにはなっていた。
・トム・スケリットが本人役で登場。色々な映画に微妙な役で出ているので、友人役というのがなんともリアルだったのかも。主人公の上司がスケリットと友人だと自慢したいために、スケリットの娘を誘拐して脅して、無理やり結婚式に連れて行った。これも元ネタがあるのかも。劇中に映画「トップガン」の台詞も出て来る。元ネタがわかった人は殆どいないだろう。
・ライアン・レイノルズ完全にゲイ扱い。キスシーンまである。よく出演したなと思った。ちなみに本人は美しい嫁がいるのでゲイではない。これは彼の演じたグリーン・ランタンが設定上ゲイ(詳しくは『
スーパーヒーロ-のグリーン・ランタンもゲイだった。』)であることが元ネタだろう。そもそもグリーンランタンがそこまで浸透していないのもあって、これも日本の観客の多くは気付けなかったのではなかろうか。
・テッド・ダンソンちらっと登場。テッドつながりだろう。
その他小ネタ
『007/オクトパシー』……主題化歌登場。下手くそな歌で歌われる。カーリー・サイモン、シャーリー・バッシー等に歌われた歴代007の主題歌と比べてオクトパシーの歌手がリタ・クーリッジだったことへのオマージュか?よくわからない。
『ブリジット・ジョーンズの日記』……どうせ観て泣いてスッキリしてるんだろとネタに使われる。
『スター・ウォーズ エピソード1』……テッドがヨーダのコスプレをして映画観に並ぶ。
『スーパーマン・リターンズ』……ブランドン・ラウスが散々なことを言われる。実名でこんな……
『ジャックとジル』……アダム・サンドラーが(同上
『ナイトライダー』……携帯の着信音。
『ブランドン・ラウス、テイラー・ロートナ』……写真で登場。
『ティファニー』……誘拐犯が踊っていた。アメリカ人にとっては当時流行の恥ずかしい思い出的なネタだと思う。日本人が見ても、「うわ、時代を感じるな」と感じたと思う。日本でいうシブがき隊みたいな?違うか。要はいい年してフラッシュ・ゴードンに興奮する三十路の主人公と、いい年してティファニーを踊るおじさん、ぬいぐるみに執着する二人の類似性を示しているのだと思う。主人公とオッサンは表裏の存在で、表の主人公がどうそのまま問題を解決していくか、というところ。
ネットにあった書き込み。
いちばん映画館が盛り上がったのは雷が鳴った後のジョンとテッドの行動。つまり
スラップスティックの笑い(①)
中くらいだったのはスーパーでの面接などのジョーク(②)
滑っていたのがトム・スケリットなどのアメリカ人ネタ(③)
割合は①40%②25%③35%だから日本人にも受けた。なるほど。いろんな種類の笑いがバランスよくちりばめられていたから、日本人でもウケたというわけか。横にいた若いギャルが途中で「ヒャヒャヒャ」と爆笑していたが、笑うポイントが自分とかなり違うと感じたが、それぞれに笑うポイントがある映画だったのかもしれない。
感想(ネタバレあり)
個人的な評価「★★☆☆☆」
ギャグが直球でヒネりがあまり無く、爆笑できる場面は少なかった。シュールな笑いが好きな方なので、評価は低くなってしまったがあくまで個人的な評価。予告を観た時点であらかた展開の予測がついてしまったのもある。中身がオッサンのテディベアというコンセプトが全ての映画だったと思う。
それなりに楽しめた。女の人にとっては、可愛かったり母性本能がくすぐられそうな場面も多かったため評価がもう少し高くなりそうだ。レビューも観ても女性の方が満足度が高そう。
R-15なのでかなり過激な内容を予想していたが、、直接的なエロシーンや残虐なシーンは殆どない。ただ、序盤からユダヤ差別的な表現が出たり、主人公とテッドがマリファナをゴボゴボ吸ったり、テッドがデリバリーヘルスを呼んだり店の裏でファックをしたりと、確かに教育上よろしくなさそうな描写がいくつか。ただ、そういう奔放さ、過激さも含めて"アメリカンだなぁ"という感想。日本人が映画をつくってもなかなかこうはできない。恐らくPTAやら差別団体やらから散々抗議を喰らって即刻放映延期になるのではなかろうか。
ローカルなネタがふんだんに盛り込まれている分、日本人には理解しかねることも多かったのではなかろうか。タレントの名前や地名イジリ、ユダヤネタなど欧米で無いと理解できないようなネタがいくつも。観客の若い女性の多くは、フラッシュ・ゴードンや芸能人等の元ネタを理解できずに雰囲気で笑っていたと思われる。アメリカで生活していないとわからなそうな固有名詞もかなり多かった。そういう意味ではアメリカで大ヒットしたのも頷けるし、日本でヒットした一方でこの映画を100%楽しめた日本人は少ないだろうと思う。字幕は「クマもん」「ガチャピン」等頑張って日本人になじみのある言葉に置き換えたりしていた。やややりすぎな点はあるが相当頑張ったと思う。
殴り合いのガチなシーン、カーチェイス、シリアスなシーン、おバカなシーンのバランスはよかったと思う。あまり日本人向けの映画ではないなと感じたが、小ネタが理解できなくてもそれなりに笑えたり感動できる場面があったため観た人は概ね満足できたことだろう。デュー・デートやハングオーバー等のように、息ができなくなるほど笑うシーンは少ないが、かわりにニヤニヤできるシーンは結構あった。過激して女子受けしないようなネタも、テッドがくまのぬいぐるみであることで緩和されている。
ヒロインのミラ・クニスはセクシーで可愛くてハマり役だと思った。しかしエリートで美人にも関わらず、収入が低い上に大事なところでいなくなってパーティーに参加するような駄目彼氏をあそこまで許容できる懐の広さはすごい。精神的に幼い主人公がテッドから離れて成長していく物語ではなく、あくまでガキのままどう収拾つけていくか、という展開はなかなかよかった。ゲームにハマる子供からゲームを取り上げるのではなく、どうゲームと付き合っていくか、というようなものだろう。テッドがあまりに人間味溢れていて、また周りもぬいぐるみであるように扱わないために、途中からテッドが敢えてぬいぐるみである必然性をあまり感じなくなっていった。自分にこんな兄弟や親友がいたらなあという気分で観た人も多いだろう。
その他のレビュー
お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法 「テッド」「宇宙人ポール」「フランケンウィニー」「トイストーリー」等様々な例を挙げつつレビュー。面白い。
xi~気ままに映画批評~「テッド」予告についてのコメントがわかりやすい。確かにこの映画の予告はよかった。アクの強いこの映画が日本でもヒットした理由の大部分がこの予告によるものだと思う